イチゴの人工授粉の仕方|受粉のコツと実を成らせる方法を図解&動画解説
家庭菜園としてイチゴを育てる場合、人工授粉をしてあげた方がより確実にきれいな実をならせることができます。
“人工授粉”というとなんだか初心者には難しい作業に感じますが、コツさえつかめば全然難しくありません!
この記事ではイチゴの人工授粉について、いつ、どのタイミングで、どこに、どうやって行えば良いのか詳細を全て解説しています。
ぜひ参考にしてみてください。
もくじ(タッチすると移動します)
開花から受粉→結実までの流れ
まずは、人工授粉をするにあたりイチゴの花が咲いてから実がなるまでの全体の流れを把握しましょう。
開花
↓
受粉(自然受粉OR人工授粉)
↓
結実
↓
肥大
↓
収穫
イチゴの実がなるのはまずは、イチゴの花が咲かなければ始まりません(開花)。
花が咲き、自然受粉か人工授粉が行われると受精が完了します。
受精されると花托(かたく)と呼ばれる私たちが食べている赤い実の大本が成長し始め、肥大し、収穫に至ります。
しかし、人工授粉に失敗すると奇形果(きけいか)が出来てしまいます。
詳細は>>イチゴの実の形が凸凹でいびつになる原因と対策【奇形果・乱形果】で確認して下さい。
こうならないためにもイチゴの人工授粉は大切な作業です。
イチゴの受粉方法
- 自然受粉・・・ミツバチなどの虫や風によって自然に行われる方法
- 人工授粉・・・筆や梵天(ぼんてん)を使って人工的に行う方法
イチゴの実ができるためには受粉が必要なのですが、2通りの方法があります。
自然受粉
ミツバチやマルハナバチ、シマハナアブなど訪花昆虫(ほうかこんちゅう)と呼ばれる虫が花の蜜を吸いにやってきて、グルグル回っているうちに体に付着したおしべの花粉がめしべにくっつき、受粉が行われます。
また、ハウス栽培ではなく家庭菜園で一般的な屋外で育てる露地栽培(ろじさいばい)の場合は、風などによって花と花が擦れ、受粉されることもあります。
人工授粉
人工授粉とは柔らかい筆や綿棒、耳かきの反対側に付いている梵天(ぼんてん)と呼ばれるフワフワした綿を使って、おしべとめしべをまんべんなくなで受粉させる方法です。
プロのハウス栽培をしているイチゴ農家さんでは、受粉専用のミツバチを購入して人為的に放出し、受粉をさせているためこれもある意味人工授粉ともいえるのですが、この記事では人工授粉とはあくまで素人が家庭菜園で行う筆などを使って行う方法を指しています。
人工授粉をした方が良いケース
- 確実に実を成らせたい
- 品種本来の形の良い実を成らせたい
- 虫があまりいない場所で栽培している
- 高層階でベランダ栽培している
確実に実を成らせたい
花が咲いた後、人工授粉をすれば自然受粉に頼るよりも確実に実を成らせることができます。
もちろん、その後の栽培状況によって実がなる量が少ないなどありますが、少なくと正しく人工授粉が行われていれば、実がなるかどうかわからないなんてことはありません。
開花→人工授粉→結実→収穫の流れになります。
品種本来の形の良い実を成らせたい
「宝交早生」「章姫」「紅ほっぺ」等々、イチゴにはたくさんの品種がありますが、品種本来の形があります。
例えば家庭菜園の定番商品である「宝交早生」は小さい円すい形、「章姫」は縦長の円すい形、「紅ほっぺ」は大きい長円形です。
このようにそれぞれの品種が持っている本来のきれいな形があるわけですが、受粉が上手くいかないと凸凹の実ができたり、全体的にいびつな形になる“奇形果”が出来てしまいます。
しかし、人工授粉によってまんべんなくおしべの花粉をめしべの柱頭に付着させてやることで、品種本来の持つ正しいきれいな形をした実を成らせることができます。
虫があまりいない場所で栽培している
繰り返しますが、イチゴは栽培環境にミツバチ、マルハナバチ、シマハナアブなど訪花昆虫(ほうかこんちゅう)と呼ばれる虫が来れば、人工授粉をしなくても虫によって受粉されます。
もちろん、虫も完璧に受粉作業をしてくれるわけではないので、むらはできますが、1つも実が成らないなんてことはありません。
しかし、プランター栽培や害虫除けをしているなど、これらの虫が全く来ないような環境でイチゴを栽培している場合、人工授粉をしてあげる必要があります。
高層階でベランダ栽培している
虫があまりいない場所で栽培しているケースに含まれますが、マンションの高層階のベランダなどでプランター栽培をしているとき、虫が全く来ないケースがあります。
もし、ご自宅が該当し真夏でも蚊など全く虫が来ない環境であれば、ミツバチなど訪花昆虫が来ることもほぼないので、人工授粉をされた方が良いです。
人工授粉する時期とタイミング
では、人工授粉をする時期はいつがベストなのか?については下表をご覧ください。
作型 | 時期 | タイミング |
露地栽培 | 4月 | 開花後4日以内、晴天日の正午ごろ |
四季成り品種 | 4~5月 | |
鉢植え促成栽培 | 11月 |
時期
一般的に10月くらいから5月くらいにかけて栽培する露地栽培では4月に行います。
一季成り品種であろうと四季成り品種であろうと昨秋から栽培をスタートした場合が該当します。
四季成り品種は秋からも苗が販売されていますが、主に春から栽培をスタートさせて秋まで育てる場合の受粉時期は4月~5月です。
最後の鉢植え促成栽培とは9月~10月にかけて購入した苗を11月に人工授粉し、12月~1月に収穫し終える作型です。
春と違い11月頃は訪花昆虫がほとんど飛んでこない季節のため、人工授粉は必須作業になります。
タイミング
花が咲いているからと言っていつまでも受粉ができるとは限りません。
ベストなタイミングがあります。
おしべの花粉は開花する前日くらいから先端にある葯(やく)という花粉が入っている袋が裂けはじめ、開花当日に飛散します。
めしべにも寿命があり、だいたい開花してから7日程度なのですが、品種本来のきれいな実を成らせるには開花後3~4日以内に人工授粉作業を終えましょう。
天候と時間帯
人工授粉にもっとも適した天候は晴天日です。雨が降っている日はせっかく受粉させても花に雨があたり、流れて落ちてしまうだけでなく、高湿度も関係しています。
人工授粉に適した時間帯は正午ごろです。
基本的に花粉は湿度が60%以下など低湿条件下で飛散します。
そのため結露しやすい朝よりも正午くらいの方が湿度が下がるため適しているのです。
人工授粉は晴天日の正午ごろと覚えておきましょう!
人工授粉のやり方手順
では、具体的な人工授粉の仕方について見て行きます。
■用意するもの
次の内のどれか1つでOK
- 毛先が柔らかい筆
- 綿棒
- 梵天(ぼんてん:耳かきの反対側に付いているフワフワの綿)
人工授粉をする場所
イチゴの花をご覧ください。
中心の少し膨らんでいるところ全体が花托(花床)かたく、かしょう)といって赤くなるイチゴの実の部分です。
花托の周りにチョンチョンと出ている芽のようなものがおしべです。
花托の表面を覆っている毛のようなもの1つ1つがめしべです。
人工授粉のやり方は、おしべの花粉を中心のめしべに付着させます。
具体的には柔らかい筆、綿棒、梵天を使って、おしべの花粉をめしべ全体になでるように付着させてください。
1~2回程度なぞれば十分です。
あまり何回もやっているとムラができたり、めしべを傷めたりして逆効果になります。
詳しくは実際に人工授粉をしている動画をご覧ください。
まとめ
■人工授粉のコツ
- 筆、綿棒、梵天を使う
- 開花して3~4日以内に行う
- 晴天日の正午ごろがベスト
家庭菜園初心者でも、適切な時期と方法で人工授粉を行えば、品種本来が持つきれいな形のイチゴを成らせることができます。
育てている環境にミツバチなどの訪花昆虫がたくさん寄って来るのであれば、特に人工授粉をしなくても自然受粉によって実が成りますが、そうではない環境で栽培している場合、必ずやった方が良い作業です。
図解や動画で解説した通り、コツさえ知れば誰でも簡単にできる作業なのでぜひ、試してみてくださいネ!
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