食用菊の育て方|もってのほかを初心者が栽培できる方法
奈良時代から食されている食用菊。古代から続くエディブルフラワーといっても過言ではありません。
食用菊はあまり食卓に並ぶことはありませんが、山形県では“菊味噌”として広く知られている花であり「野菜」でもあります。
今回は自宅で食用菊の代表品種「もってのか」の栽培方法を画像と共に紹介します。
もくじ(タッチすると移動します)
栽培基本データ
科名 | キク科 |
食用部分 | 花 |
生育適温 | 15~25℃ |
スタート方法 | 苗 |
連作障害 | あり(2~3年空ける) |
株サイズ | 幅40~50㎝ 高さ50~60㎝ |
病害虫 | アブラムシ等 |
食用菊の栽培時期と収穫までの流れ
地域 | 植え付け | 収穫 |
中間地(関東甲信・東海・近畿・中国・九州北部) | 5月下旬6月中旬 | 10月初旬~12月上旬 |
北海道・東北 | 6月中旬~7月上旬 | 9月下旬~11月下旬 |
四国・沖縄・九州南部 | 5月中旬 | 10月中旬~12月中旬 |
寒冷地・中間地・暖地の区分
中間地・・・関東甲信、東海、近畿、福井県、中国、九州北部
暖地・・・・四国、九州南部、沖縄県
食用菊栽培のコツ
- 摘芯(てきしん)をする
- 支柱立て・ネット張り
- リン酸成分肥料を追肥
用意するもの
- 苗
- 培養土(肥料配合済み)
- 鉢底石(排水システムがあれば不要)
- プランター 直径30㎝×深さ30㎝ 容量20ℓ
食用菊の主な品種
食用菊は2つの用途に分けることができます。
1つはお刺身のつまに添えられている「安房宮(あぼうきゅう)」という種類ともう1つは「もってほのか」や「寿」を代表とするおひたしや和え物、酢の物、天ぷら、お吸い物など広く花自体を食用とする種類です。
食用菊の国内生産6割超を占める山形県では以下の品種が栽培、出荷されています。
品種名 | 色 | 備考 |
もってのほか/かきのもと | 赤紫 | 奈良時代に中国から伝来。 |
延命楽 | 赤紫 | |
寿 | 黄 | 代表的黄品種 |
かなわ | 黄 | |
秋の恵 | 黄 | |
岩風 | 黄 | |
超天楽 | 黄 | 最新品種 |
菊名月 | 黄 |
由来は菊花紋章!菊のご紋を食べるなんて“もってのほか”
豆知識ですが、「もってのほか」の名前の由来はキクは天皇、皇室を表す紋章(具体的には十六葉八重表菊)を食べるなんて恐れ多くて“もってのほか”ということから名づけられたと言われています。
“もってのほか美味しい”という説もあります。
苗選び
食用菊の苗ってどこに売っているの?あまり見たことがないけど、、、という人も多いと思います。
実は食用菊は“野菜”として認識されていますが、分類上は「花」です。そのためホームセンター等でも野菜売り場ではなく草花売り場に置かれていることが多いです。
キクの苗といえば日本を代表するキクの育種・種苗販売のイノチオ精興園(株)さんの商品が流通しています。
主な苗選びのポイント
- 茎がしっかりしている
- 間延びしていない
- 害虫被害がない
- 葉が濃緑色をしている
基本的にキクは超丈夫な植物なので、栽培で大きく失敗することは少ないのですが、茎が太く、真っ直ぐしていて葉色が薄い緑色よりも濃緑色を選ぶといいですね。
苗の植え付け
さて、キクは栽培期間が長いので深さが浅いプランターよりも深さ30㎝くらいあった方がしっかり根付くので安心です。
プランターの上から3㎝くらいまで培養土を入れます。
ポットを置き植える位置を決めます。
ポットから苗を出しスコップあるいは手で穴を掘ります。
植え付ける際の注意点として、ポットに植わっているときの苗の根元の高さとプランターに植え付ける際の高さを同じにすることです。
文章で読んでいても分かりにくいので下写真を見て下さい。
苗を植える深さは浅すぎても深すぎてもダメです。
土をかぶせます。
支柱立て/ネット張り
プランター栽培の場合は成長に従って支柱の本数を増やし茎を支えます。
収穫時期になるとこんな感じです。
畑で栽培する場合は、支柱を立て草丈30㎝くらいまで成長したらフラワーネットを張ると良いです。
キクはたくさん花芽を付けるためネットの方が収穫時に花が折れにくく、管理しやすです。
摘芯(てきしん)
食用菊栽培で重要なのは摘芯(てきしん)です。
園芸用語ではピンチ(pinch)とも言いますね。摘芯とは茎の先端を切ることです。
なぜ摘芯(てきしん)する必要があるのか?というと茎を分岐させることで花芽がつく場所を増やし、結果的に花の収穫量を増やすことができます。
パンジーやビオラなど花数を増やしたいときにも摘芯(ピンチ)しますよね?あれと同じことをします。
苗を植え付けてだいたい15~20日程度経ったらまっすぐ伸びている中心の茎(主枝)の先端をパツンと切ってください。
そうすると切った場所から「わき芽」と呼ばれる新しい茎になる芽が左右2つ出てきます。中心の枝+わき芽2本=合計3本。
わき芽が伸びてきました。
解説すると主枝を切った下の左右の脇から新芽が出てきます。
水やり
キクは丈夫な植物なのと、水切れすると葉がしんなりとして水やりのタイミングがつかみやすいです。
もちろん、葉が完全にしなってから与えるのではなく毎日観察していると、水が足りているときの葉の様子と不足している時の葉の様子が区別できるようになります。
ただ、最初のうちは初心者は区別するのが難しいので土が乾燥して乾いているときの鉢の重さと水やり後の鉢の重さを体感で比較しましょう。
「乾燥しているときはだいたいこのくらいの重さだな」「水やりをしたらこのくらいの重さになった」など自分でプランターを持って感覚を覚える練習をしてください。
そうすれば、次の水やりのタイミングは土が乾燥している状態に近くなったときだということがわかります。
葉の様子と合わせて水やりのタイミングをつかみましょう。
害虫対策
主な害虫としてアブラムシ、ハモグリバエ、キクモンサビダニ、オオタバコガ、ハスモンヨトウ、バッタなどいますが、
最も多い害虫被害はアブラムシです。アブラムシには多くの種類がいますが、プランターを動かしたとき、あるいは株周りにたくさんの白い物体がパーッと飛び交っていたらアブラムシだと思ってもらっていいです。
アブラムシ対策は薬剤散布が効果的ですが、無農薬栽培にこだわりたい方は住友化学園芸から出ているヤシ油成分を使用した「アーリーセーフ」などを定期的に散布すると良いです。ヤシ油の粘着性でアブラムシ自体が包まれると窒息して駆除するしくみです。
病気対策
食用菊に限らずキク全般にいえる病気ですが、うどんこ病・褐さび病・黒さび病・キク花枯病・萎凋病(いちょうびょう)等々あります。
対策としては風通しの良い場所で栽培し、水のやり過ぎなどで加湿にし過ぎない、たまに葉っぱにもシャワー状、霧吹き状の水をかけて過乾燥を防ぐ、周りに病気にかかっている野菜、植物から離すなどです。
うどんこ病などは近くにかかった植物があるとすぐに移ります。
殺菌剤散布も予防としての効果はあるので定期的に行うと良いでしょう。
病気は害虫と違って一度かかってしまうと治すのが難しいです。かかる前に対策を打つのが正解です。
追肥
植え付け一ヶ月後くらい経ったら2週間に1回化成肥料を30g、あるいは液体肥料を水やりと合わせて与えて下さい。
化成肥料は葉の成長を促す窒素成分(N)花や実の成長を促すリン酸(P)、根の成長を促すカリ(K)の3要素+微量要素が整えられて配合されているものなのです。
初心者には簡単で良いですが、欲を言えばリン酸成分肥料にこだわるともっといいですね。
食用菊は“花”を食べるものです。花や実の成長を促す肥料成分はリン酸です。
粉末状の発酵油かす+リン酸成分の肥料(バッドグアノ、骨粉など)を加えたり、ぼかし肥にリン酸成分を少しプラスするなどして花に養分が行き渡るようにすると良いです。
収穫
10月に入ると蕾が付き始めました。
10月後半から11月、12月にかけて蕾が開花し花を開かせます。
やっと開花してきました。
食用菊は花びらを食べるので、しっかり大きく花が咲いた時点で1輪ずつ収穫しましょう。
このくらいまで咲けば収穫サイズです。
ただし、あまりに収穫が遅れると花びらが茶色くなってきます。
収穫適期を逃さないように観察して下さい。
調理
食用菊の主な食べ方は以下です。
- あえもの
- おひたし
- 酢の物
- 天ぷら
- すいもの
サラダなど生食はできないのでやめましょう。食べられないことはないですが、生で食べるものではないです。エディブルフラワーと言われていますが、あくまでも茹でるなど火を通して食べるのが食用菊です。
今回は、おひたしを作ります。調理方法はあえもの、酢の物など天ぷらを除きどの料理の調理過程にも共通するので参考にしてください。
食用菊の茹で方
まず、軽く水で洗います。スーパー等で販売されているものは洗わなくても良いと言われていますが、家庭菜園の場合は衛生管理が徹底されたハウスで栽培したわけではないので私個人的には水で洗っています。
味は、花びら自体はそれほどクセはありません。しかし、ガクの部分(ヘタのように見える場所)は苦く、“ザ・キク”の強いにおいがするので下準備の段階でしっかり取り除き、花びらを1枚1枚摘んでバラバラにします。
下準備をしている間にお湯を沸かし沸騰させます。
お鍋いっぱいの水に対して酢を大さじ一杯程度入れて、花びらも入れます。
だいたい30秒ほどお湯に通し、花びらに透明感が出たら冷水に浸して冷まし、ザルで水切りしてください。
食用菊「もってのほか」は花びら1枚1枚が筒状で中が空洞になっているため、元々シャキシャキとした食感があります。
長く茹でてしまうと、しなっとして食感が失われるので湯通しするくらいのイメージでOKです!
天ぷらの場合は花びらはバラバラにせず、ガクの部分も含めてそのまま揚げます。ただ味は苦みがあり大人の味がします。
食用菊は奈良時代に中国から入ってきましたが、元々の用途は薬です。漢方薬と聞けば苦い理由も納得ですね。中国では延命長寿の花とされていたので「延命楽」という名前がついた品種があります。
まとめ
食用菊は普段食べなれない“野菜”ですが、スーパーでも周年を通して販売されています。特に10月~11月にかけて赤紫色の「もってのほか」「延命楽」が出回っています。1パックで250円程ですが、わざわざ購入する“野菜”としてはちょっとお高いですね。
しかし5月に出回る苗であれば成長から収穫まで楽しめますし、なんといっても摘芯と追肥をしっかりと行えば、沢山の花芽が付くので大量に収穫することができます。
茹でて冷凍庫で保存すればお正月の彩り野菜としても利用できますよ!
しかもキクは耐寒性多年草!冬期、休眠期に入りますが、北日本でも越冬しますのでそのまま来年度も収穫することが可能です。
栽培期間は長いですが、耐暑性、耐寒性とも強いため初心者でも簡単に栽培できるのでぜひチャレンジしてみてはいかかでしょうか!
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